タイズプレゼンテーション

ピタゴラスの穴 by 雑学界の権威・平林純

著者 平林純
1968年、東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。ウェブサイト「hirax.net」主宰。全く役に立ちそうもない雑学的な科学ば かりを日々研究している。著書に「論理的にプレゼンする技術―聴き手の記憶に残る話し方の極意」(サイエンス・アイ新書)など。

自由の女神・奈良大仏・鎌倉大仏で「銅メダル何枚作れるか」競技をすると?意外な順位の秘密とは!?

「自由の女神」は昔、銅メダルの色だった!

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「自由の女神」像は、アメリカ合衆国のニューヨーク港にあるリバティ島に立つ銅像です。本来、銅は赤い金色で、銅メダルのような色ですが、鎌倉大仏と同じように海沿いで風雨にさらされているうちに、表面が(銅が酸化して)緑青に覆われて、今の青緑色の姿になっています。
世界一高い銅像は、日本の茨城県牛久市にある牛久大仏(高さ116メートルの青銅仏像)ですが、自由の女神も、右手で掲げたトーチ(たいまつ)まで足下から高さ約46メートルの巨大銅像です。もしも、自由の女神を溶かして銅メダルを作ったら、何個くらいのメダルを作ることができるでしょうか?

自由の女神1体で、銅メダルを5万4400枚分!

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自由の女神は、内側にステンレス製の骨格があり、その外側に純銅の板が貼り付けています。作られた当時は、鉄製の骨格でしたが、1986年に建造100年を記念して行われた修復工事で、骨格をステンレス骨格に交換されました。自由の女神の内部にある骨格の重量は、113.4トン。そして、外側に貼り付けられた銅板は、厚みが約2.4ミリメートル重さ27.2トンです。オリンピックのメダルは、直径60ミリ、厚さ3ミリより大きいことと定められていて、重さはロンドン・オリンピックで約400グラム、リオ・オリンピックで約500グラムの青銅製です。
一枚あたり500グラムのリオ・オリンピックの銅メダルを、27.2トンの自由の女神を溶かして作ったら、

27.2トン/500グラム=5万4400枚

もの銅メダルが手に入ります。膨大な枚数です!

自由の女神より、奈良大仏や鎌倉大仏の方が、銅メダル獲得数はずっと多い!

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ところが、ためしに、奈良や鎌倉の大仏で同じ計算をしてみると、驚くことがわかります。奈良の大仏は、身長14.9メートルで青銅の重さ約250トン。鎌倉の大仏は、身長11.4メートルで重さが約120トン。それぞれ何枚の銅メダルを作ることができるか計算してみると、鎌倉大仏で24万枚、奈良大仏はなんと50万枚!です。自由の女神と比べると、高さが1/3ほどの奈良大仏が自由の女神の10倍もの銅メダルを作ることができ、高さが1/4の鎌倉大仏でさえ5倍もの枚数になるのです。

銅メダル枚数の違いの秘密は、銅・青銅の厚みにあります。自由の女神の場合、銅板の厚みはわずか2.4ミリメートルですが、奈良大仏や鎌倉大仏ではおよそ55ミリメートル程度、意外にもなんと20倍以上の厚みをもっているからです。奈良大仏や鎌倉大仏は、青銅自体が像を支えているため、倒れたり壊れたりしないように、青銅がとても厚くなければいけないのです。

「自由の女神」は、350個のパーツに分解できる!

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「自由の女神」は、内部の鉄骨が像を支え、その周りにとても薄い銅板を貼り付けるという構造である必要がありました。自由の女神は、その姿を彫刻家バルトルディが作り、建築物としての設計を技術者エッフェルが行いました。アメリカ合衆国の独立100周年を記念してフランスがアメリカに贈呈した自由の女神像は、まず1884年にフランスのパリで組む上げられた後に、もう一度約350個のパーツに分解して、船に載せて大西洋を渡り米国へ運ばれて、1886年10月28日に除幕式が行われました。倒れない巨大銅像でありつつも、海を渡り運ぶためには、このような構造である必要があったのです。技術者エッフェルは、自由の女神の設計経験を生かし、パリのエッフェル塔を作り上げることになるのです。

結論!
・自由の女神から作れる銅メダルの数は5万4400枚
・奈良大仏と鎌倉大仏は自由の女神より銅の厚みが5倍〜10倍
・自由の女神は輸送に適した、軽く、分解できる構造になっている