タイズプレゼンテーション

ピタゴラスの穴 by 雑学界の権威・平林純

著者 平林純
1968年、東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。ウェブサイト「hirax.net」主宰。全く役に立ちそうもない雑学的な科学ばかりを日々研究している。著書に「論理的にプレゼンする技術―聴き手の記憶に残る話し方の極意」(サイエンス・アイ新書)など。

2人で対決する「決闘」…自分が生き残る確率は50パーセントで正しいか?

2人が対決する決闘、生き残る確率と殺される確率、一体何パーセント?

500px-Statue_of_Liberty_7

お互いの生命を賭して2人で戦うのが「決闘」です。キッカケは何であれ、自分にとってはとても大切なことのために、命を掛けて、自分と相手とふたりきりで戦います。…さて問題です。決闘をしたら、自分が生き残る確率は何パーセントになるでしょうか?

おそらく、「それは50パーセントに決まってる!」と答える人が少なくないと思います。命を賭けた戦いでふたりが戦えば、そこで倒れるのが1人・そこから生き残るのも1人のはずで、つまりはイコール、生き残る確率は1/2=50パーセントに違いない!という理屈です。

これまで歴史上、世界いたるところで「決闘」という文化はありました。しかし、多くの時代や国で、実は決闘で生き残る確率は50パーセントからはかけ離れたものでした。

19世紀イタリアの決闘では、生き残る確率は何とビックリ98パーセント

500px-Statue_of_Liberty_7

1879年からの10年間に、イタリアで行われた2759件の決闘について行われた調査結果によれば、決闘で殺された人は何とビックリわずか2パーセントに過ぎなかったといいます*。ということは、生き残る確率は、100パーセント−2パーセント=98パーセントにもなります。

2人で戦う決闘なのに、死ぬ確率が50パーセントではなく、生き残る確率もなぜ50パーセントではないかというと、決闘というものは相手を殺すまで行うものではなかったからです。

そもそも、何か諍(いさか)いがあったとしても、「決闘」は可能な限り回避することが求められましたし、どちらかが決闘を続ける気持ちを失ったら、つまり自分の負けを認めたら、そこで決闘は終えられたからです。

不要な「決闘」はいつの時代も避けられてきた。

日本で有名な「決闘」と言えば、宮本武蔵と佐々木小次郎の「巌流島の決闘」です。江戸時代の始め、中国地方と九州地方の間にある関門海峡にある無人島、巖流島で行われたという2人の決闘も、小次郎は武蔵に殺されたわけではないとも言われています。

西洋でも、日本でも、不要な「決闘」はいつの時代も可能な限り避けられていました。「決闘」という言葉を聴くと、自分か相手、どちらか一方は倒れ・もう片方だけが生き残る…というイメージがありますが、2人で対決する決闘…実は生き残る確率、実は50パーセントより遙かに高かったようです。

結論!
・19世紀イタリアの例では98パーセントは生き残る!
・不要な「決闘」は、いつの世も避けられていた。

*「決闘の話」より「パル・マル・ガゼット 1890/10/6」から

鎌倉大仏、十円玉何枚で作れるか!?

鎌倉大仏は10円玉と同じ青銅でできている。

500px-Statue_of_Liberty_7

鎌倉大仏は重さ121トン、銅にスズが溶けた合金で作られています。作られた当時、大仏の表面は金箔で覆われていましたが、今では金箔が張られていた名残がごくわずかに残っているだけで、ほぼ銅の合金だけになっています。

鎌倉大仏を作り上げている合金の比率は、おおよそ銅70%亜鉛20%スズ10%。成分や比率が少し違いますが、オリンピックの銅メダル(銅97%・亜鉛2%・スズ1%)や10円玉銅95%・亜鉛4%・スズ1%)と同じ青銅製です。

青銅の色は、本来、銅メダルや新らしい10円玉のような赤みをおびた光沢を持つ金属色をしています。しかし、時間が経ち酸化すると、青銅の表面は青緑色の錆(緑青)で覆われてしまいます。古い10円玉も緑青に覆われて青緑色になりますが、それと同じように、鎌倉大仏も長く風雨にさらされているうちに、今の青緑色の姿に変化したわけです。

鎌倉大仏を10円玉で作ったら4450万枚=4億4500万円ナリ

500px-Statue_of_Liberty_7

鎌倉大仏が10円玉と同じ青銅でできているなら、それを集めて溶かせば、鎌倉大仏と同じような大仏を作ることもできるかもしれません。一体、何枚あれば鎌倉大仏を作ることができるのでしょうか?

鎌倉大仏は、表面積が約525平方メートル、厚みが約5.5センチメートルの青銅で作られています。青銅の体積を計算すると、面積と高さを掛け合わせて、2890万立方センチメートルとなります。 10円玉(直径23.5ミリメートル、厚み1.5ミリメートル)の体積は、一枚あたり0.65立方センチメートル。ということは、鎌倉大仏の体積2890万立方センチメートルを10円玉の体積0.65立方センチメートルで割ることで、鎌倉大仏を作るのに必要な10円玉の枚数=約4450万枚ということがわかります。

10円玉4450万枚=4億4500万円分集めれば、鎌倉大仏に必要な青銅を準備することができる!のです。といっても、同じ体積の青銅を素材として買えば、約1億3千万円程度で手に入れることができるので、鎌倉大仏を10円玉を集めて作ろうとするのでは、値段的にかなり損をすることになります。

500px-Statue_of_Liberty_7

鎌倉大仏をアルミニウムの1円玉で作ったら、6050万枚=6050万円ナリ!

ちなみに、鎌倉大仏を1円玉で作るなら、6050万枚=6050万円で作ることができます。1円玉の場合は、材料として使われているアルミニウムの値段も約1円。硬貨の値段と材料費がほぼ同じです。そのため、アルミニウムで作る場合は、原材料のアルミニウムを買うのも、1円玉を溶かして作るのも、同じくらいの金額でできるということになります。

鎌倉大仏は中国の硬貨(宋銭)を集めて溶かして作られた?

500px-Statue_of_Liberty_7

高さ11.39メートルの鎌倉大仏は、鎌倉市の長谷にある高徳院というお寺に鎮座しています。鎌倉時代の末期1300年頃に幕府公式にまとめられた歴史書「吾妻鏡(あづみかがみ)」には、1252年8月17日に、大仏の鋳造(熱で溶かした青銅を鋳型に流し込んで形を作り始めること)が始まったと記録されています。

鎌倉大仏で使われている青銅は、科学分析(元素分析や鉛同位体比分析)の結果から、平安後期から鎌倉時代前半頃の中国華中や華南産であることがわかってきています。また、宋時代の銅貨(宋銭)とほぼ同じ組成です。そのため、当時価値が低かった古い宋銭を輸入し集めて溶かすことで、鎌倉大仏は作られたという説があります。古く使われなくなってきていた宋銭は安く輸入することができたので、青銅を材料として輸入するよりも便利だったり安かったりしたため(一円玉の例と同じです)、宋銭を溶かして鎌倉大仏を作ったのだろう、というわけです。

鎌倉大仏に関して書かれた文献はとても少なく、作られた理由やどのように作り上げたかも正確にはわからず「謎」が多い大仏です。10円玉と同じく青銅でできていた古代中国の宋銭で大仏は作られたのでしょうか?

結論!
・鎌倉大仏を10円玉で作ったら4450万枚=4億4500万円!
・青銅製の鎌倉大仏は、青銅の材料費だけなら1億3千万円!
・鎌倉大仏をアルミニウムの1円玉で作ったら、6050万枚=6050万円ナリ!

自由の女神・奈良大仏・鎌倉大仏で「銅メダル何枚作れるか」競技をすると?意外な順位の秘密とは!?

「自由の女神」は昔、銅メダルの色だった!

500px-Statue_of_Liberty_7
「自由の女神」像は、アメリカ合衆国のニューヨーク港にあるリバティ島に立つ銅像です。本来、銅は赤い金色で、銅メダルのような色ですが、鎌倉大仏と同じように海沿いで風雨にさらされているうちに、表面が(銅が酸化して)緑青に覆われて、今の青緑色の姿になっています。
世界一高い銅像は、日本の茨城県牛久市にある牛久大仏(高さ116メートルの青銅仏像)ですが、自由の女神も、右手で掲げたトーチ(たいまつ)まで足下から高さ約46メートルの巨大銅像です。もしも、自由の女神を溶かして銅メダルを作ったら、何個くらいのメダルを作ることができるでしょうか?

自由の女神1体で、銅メダルを5万4400枚分!

1980_Summer_Olympics_bronze_medal
自由の女神は、内側にステンレス製の骨格があり、その外側に純銅の板が貼り付けています。作られた当時は、鉄製の骨格でしたが、1986年に建造100年を記念して行われた修復工事で、骨格をステンレス骨格に交換されました。自由の女神の内部にある骨格の重量は、113.4トン。そして、外側に貼り付けられた銅板は、厚みが約2.4ミリメートル重さ27.2トンです。オリンピックのメダルは、直径60ミリ、厚さ3ミリより大きいことと定められていて、重さはロンドン・オリンピックで約400グラム、リオ・オリンピックで約500グラムの青銅製です。
一枚あたり500グラムのリオ・オリンピックの銅メダルを、27.2トンの自由の女神を溶かして作ったら、

27.2トン/500グラム=5万4400枚

もの銅メダルが手に入ります。膨大な枚数です!

自由の女神より、奈良大仏や鎌倉大仏の方が、銅メダル獲得数はずっと多い!

500px-Kamakura_Budda_Daibutsu_front_1885

ところが、ためしに、奈良や鎌倉の大仏で同じ計算をしてみると、驚くことがわかります。奈良の大仏は、身長14.9メートルで青銅の重さ約250トン。鎌倉の大仏は、身長11.4メートルで重さが約120トン。それぞれ何枚の銅メダルを作ることができるか計算してみると、鎌倉大仏で24万枚、奈良大仏はなんと50万枚!です。自由の女神と比べると、高さが1/3ほどの奈良大仏が自由の女神の10倍もの銅メダルを作ることができ、高さが1/4の鎌倉大仏でさえ5倍もの枚数になるのです。

銅メダル枚数の違いの秘密は、銅・青銅の厚みにあります。自由の女神の場合、銅板の厚みはわずか2.4ミリメートルですが、奈良大仏や鎌倉大仏ではおよそ55ミリメートル程度、意外にもなんと20倍以上の厚みをもっているからです。奈良大仏や鎌倉大仏は、青銅自体が像を支えているため、倒れたり壊れたりしないように、青銅がとても厚くなければいけないのです。

「自由の女神」は、350個のパーツに分解できる!

Head_of_the_Statue_of_Liberty_on_display_in_a_park_in_Paris

「自由の女神」は、内部の鉄骨が像を支え、その周りにとても薄い銅板を貼り付けるという構造である必要がありました。自由の女神は、その姿を彫刻家バルトルディが作り、建築物としての設計を技術者エッフェルが行いました。アメリカ合衆国の独立100周年を記念してフランスがアメリカに贈呈した自由の女神像は、まず1884年にフランスのパリで組む上げられた後に、もう一度約350個のパーツに分解して、船に載せて大西洋を渡り米国へ運ばれて、1886年10月28日に除幕式が行われました。倒れない巨大銅像でありつつも、海を渡り運ぶためには、このような構造である必要があったのです。技術者エッフェルは、自由の女神の設計経験を生かし、パリのエッフェル塔を作り上げることになるのです。

結論!
・自由の女神から作れる銅メダルの数は5万4400枚
・奈良大仏と鎌倉大仏は自由の女神より銅の厚みが5倍〜10倍
・自由の女神は輸送に適した、軽く、分解できる構造になっている

データで眺める誕生日、生まれる人が少ないのは「土日祝日と○月×日」

意外と偏っている誕生日!
「ゴールデンウィーク」と「年末年始」に多いことが判明

誕生日は偏(かたよ)りなくバラついている。特定の日に生まれる人が多い・少ないということはなくて、どの日にも同じくらい生まれた人がいる…という印象があるかもしれません。しかし、人の誕生日は、色々な理由で、意外に偏っているものです。

たとえば、一昨年2015年に生まれたこどもたちの誕生月日(および誕生時間)を、総務省 統計局が公開している2015年分の出生数,出生年月日時・出生の場所別統計表を使い、生まれた人が多い月日・時刻をオレンジ色に・生まれた人が少ない箇所を緑色にして描いたのが下に貼り付けたものです。グラフ中の「各月は、縦軸が日付、横軸が0時~24時を表したもの」です。

このグラフを眺めると、生まれた人が多い月日・時刻と生まれた人が少ない月日・時刻が綺麗に分かれていることがわかります。ひとことで言ってしまえば、時刻では9時台から17時台、曜日で言うと月曜から金曜日(祝日はのぞく)と。見事なまでに「2015年の営業カレンダー通り」になっています。

分布図

平日に多くて、土日祝日には少ないさまは、その下に貼り付けた(横軸を月日、縦軸を生まれた人数とした)折れ線グラフからも一目瞭然です。つまり、計画分娩で出産日時がコントロールされているさまがよくわかります。見事なくらい、年末年始やゴールデンウィークといった連休カレンダーが見えてきます。

折れ線グラフ

偶然?それとも…

「4月1日」生まれが一番少ないわけとは?

この折れ線グラフをさらによく眺めると、土日祝日以外の平日でも「生まれた人が少ない日」があります。…それは、4月1日(2015年は水曜日)です。4月1日に生まれた人が少ないのは偶然や気のせいでしょうか?いえ、もちろん、それは「計画」によるものです。小学校入学の同学年は「4月2日生まれ〜次の年の4月1日生まれ」なので、4月1日は究極の早生まれに相当します。そのため、同学年の中で一番幼いことによる不利を考えて、4月2日以降の出産が選ばれているというわけです*。その結果、4月2日と3日は生まれた人が多くなっています。

データで眺めてみると、生まれる人が少ない「土日祝日と4月1日」と比べて、普通の平日は2割〜3割くらい生まれる人が多くなっています。誕生日はその年のカレンダーと連動しているので、誕生した人が多い日・少ない日は、年によって偏りが生まれます。ちなみに、休みとして月日がいつも決まっている祝日は、いつの年であっても「生まれた人は少ない」ということになるので、色々な年で平均してみてもやはり誕生日には偏りがあることになります。

結論!
・生まれる人が少ないのは「土日祝日と4月1日」

・生まれる人が多いのはゴールデンウィークや年末年始などの連休

・「究極の早生まれ」を避けた計画的な出産がデータからわかる!


*ちなみに、小学校入学の同学年が「4月2日生まれ〜次の年の4月1日生まれ」となるのは、明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)で年齢の決め方が「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」とされていることと、学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)
第二章(義務教育)の第十七条 「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う」という1文により決まっています。こういった「年齢に関する数字の話」については、また別の記事で書いてみることにします。

尿跳ねを解消する「究極小便器」と「尿跳ねを防ぐ2つのコツ」

便器に沿って角度30度以内、20cm以内に当たるように狙え!

尿跳ねは、便器にぶつかる「小便の運動エネルギー」が原因で起きる!

男性が小便器を使う時の尿跳ねは、便所の汚れや匂いを発生させたり、跳ね返った尿が衣服に付いたりもする、男性の頭を悩ます大問題です。この尿跳ねは一体なぜ起きるのでしょうか?

その理由は、「便器にぶつかる瞬間に小便(尿)が持っていた運動エネルギーのせい」です。勢いよく飛んできた尿が便器にぶつかった瞬間、尿はその勢いを止めきれず、まるで何かにぶつかった水風船やスーパーボールが飛び跳ねるように、便器の表面から空中へと跳ね返っていくのです。

01

もちろん、尿が跳ね返らないこともあります。それは、尿には便器表面に付着しようとする力も働くので、たとえば尿が便器に向かって斜めにぶつかってきた場合などは、その力によって「尿は便器表面に沿った方向に流れていく」ようになるからです。

それなら「尿が付着しやすい便器を作ってしまえば、尿ハネが解決して最高じゃない!?」となるかというと、話はそう簡単ではありません。なぜなら、便器に付いた尿は「跳ねなくなる」かもしれませんが、「尿汚れが落ちにくくなる」ということにもなってしまうからです。

尿跳ねを防ぐ、未来の「究極小便器」が開発されている!

そんな悩みを解決すべく「尿跳ねを防ぐ究極の小便器」を作りたい!というプロジェクトがあります(*1)。UrineLuckと名付けられたこのプロジェクトは、「尿が便器に向かって斜めにぶつかってきた場合には尿跳ねはしない」ということを利用したものです。

02

便器面に鋭い板をたくさん取り付けて、飛んできた尿がそれらの板に沿って流れていくように設計されているのです。また、さらに、便器の奥面に向かって尿が勢いよくぶつかったとしても、尿が跳ね返ってくることができない板を斜めに曲げつつ配置させることで、尿跳ねを全く生じさせない究極の小便器を実現するというのです。この小便器が搭乗したら、まさに理想の
小便器になりそうです。

飛び散り知らず!理系紳士の放尿とは?

03

けれど、究極小便器が一般的になるのは未来の話。そんな小便器はまだ身の周りにはありません。それでは、尿跳ねを防ぐには、一体どうすればいいのでしょうか?

米国ユタ州立大学Splash Labの研究(*2)によれば、男性器の先端から放たれた尿があまり長く空中を飛ぶと、その間に細かに別れてしまうために便器に当たった時の尿跳ねが(尿が便器表面に付着し続けることができず)避けられなくなってしまうといいます。

また、ハーバード大学の研究報告(*3)の中にある実験データをもとにすると、尿が便器にぶつかるときの角度が30度を超えると尿跳ねが起きやすい、ということがわかります。

結論!

・(先端から出た尿を)飛距離20cm以内で

・便器に沿って斜め30度以下の(小さな)角度でぶつかる

ように小便をすれば尿跳ねは起きにくい!


*1 UrineLuck!(http://engin1000.pbworks.com/w/page/37794872/UrineLuck!)

*2 The Splash Lab :Urinal Dynamics: a tactical summary(The Splash Lab)

https://www.youtube.com/watch?list=UUuCMqFXQKHS72ZRtDBM2A2w&v=UgOx7zPtsaM

(http://www.bbc.com/news/science-environment-24820279)