タイズプレゼンテーション

ピタゴラスの穴 by 雑学界の権威・平林純

著者 平林純
1968年、東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。ウェブサイト「hirax.net」主宰。全く役に立ちそうもない雑学的な科学ば かりを日々研究している。著書に「論理的にプレゼンする技術―聴き手の記憶に残る話し方の極意」(サイエンス・アイ新書)など。

データで眺める誕生日、生まれる人が少ないのは「土日祝日と○月×日」

意外と偏っている誕生日!
「ゴールデンウィーク」と「年末年始」に多いことが判明

誕生日は偏(かたよ)りなくバラついている。特定の日に生まれる人が多い・少ないということはなくて、どの日にも同じくらい生まれた人がいる…という印象があるかもしれません。しかし、人の誕生日は、色々な理由で、意外に偏っているものです。

たとえば、一昨年2015年に生まれたこどもたちの誕生月日(および誕生時間)を、総務省 統計局が公開している2015年分の出生数,出生年月日時・出生の場所別統計表を使い、生まれた人が多い月日・時刻をオレンジ色に・生まれた人が少ない箇所を緑色にして描いたのが下に貼り付けたものです。グラフ中の「各月は、縦軸が日付、横軸が0時~24時を表したもの」です。

このグラフを眺めると、生まれた人が多い月日・時刻と生まれた人が少ない月日・時刻が綺麗に分かれていることがわかります。ひとことで言ってしまえば、時刻では9時台から17時台、曜日で言うと月曜から金曜日(祝日はのぞく)と。見事なまでに「2015年の営業カレンダー通り」になっています。

分布図

平日に多くて、土日祝日には少ないさまは、その下に貼り付けた(横軸を月日、縦軸を生まれた人数とした)折れ線グラフからも一目瞭然です。つまり、計画分娩で出産日時がコントロールされているさまがよくわかります。見事なくらい、年末年始やゴールデンウィークといった連休カレンダーが見えてきます。

折れ線グラフ

偶然?それとも…

「4月1日」生まれが一番少ないわけとは?

この折れ線グラフをさらによく眺めると、土日祝日以外の平日でも「生まれた人が少ない日」があります。…それは、4月1日(2015年は水曜日)です。4月1日に生まれた人が少ないのは偶然や気のせいでしょうか?いえ、もちろん、それは「計画」によるものです。小学校入学の同学年は「4月2日生まれ〜次の年の4月1日生まれ」なので、4月1日は究極の早生まれに相当します。そのため、同学年の中で一番幼いことによる不利を考えて、4月2日以降の出産が選ばれているというわけです*。その結果、4月2日と3日は生まれた人が多くなっています。

データで眺めてみると、生まれる人が少ない「土日祝日と4月1日」と比べて、普通の平日は2割〜3割くらい生まれる人が多くなっています。誕生日はその年のカレンダーと連動しているので、誕生した人が多い日・少ない日は、年によって偏りが生まれます。ちなみに、休みとして月日がいつも決まっている祝日は、いつの年であっても「生まれた人は少ない」ということになるので、色々な年で平均してみてもやはり誕生日には偏りがあることになります。

結論!
・生まれる人が少ないのは「土日祝日と4月1日」

・生まれる人が多いのはゴールデンウィークや年末年始などの連休

・「究極の早生まれ」を避けた計画的な出産がデータからわかる!


*ちなみに、小学校入学の同学年が「4月2日生まれ〜次の年の4月1日生まれ」となるのは、明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)で年齢の決め方が「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」とされていることと、学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)
第二章(義務教育)の第十七条 「保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う」という1文により決まっています。こういった「年齢に関する数字の話」については、また別の記事で書いてみることにします。